いつか

いてもいなくてもいい人間

毎日毎日

店長が色々としてくれてたお陰で、その後その部屋に行くことはなかった

私は待機所兼事務所であるレオパレスの一部屋に寝泊まりしながらオープンラストで働くことになった

 

その店は違法店のようで、平たく言えば本ヘル

家出してきた17歳が勤務していたり、色々とヤバい店だった

 

私は男といる時に払っていたネタ代で生活費も底をつき、宜しくない所から借りていたし、男にも言われるがまま計100万以上渡していたしので、まずその返済を目標にした

 

初日と二日目に接客で脱ぐ度に体に蕁麻疹が出た

体の、最後の抵抗だったのかもしれない

お客には申し訳なかった

 

毎日最低でも5人は付き、それを毎日続けた

不正出血もした

 

店の女の子は皆優しく良い子だった

本名はお互い聞かないけど、皆それぞれ抱えているものがあり、こんな違法店で働いている

客の情報を共有したりして助け合っていた

 

借金分をあっという間に返し、数十万貯まった位で、精神的に不安定になったので退店した

 

この頃は楽しかった、かもしれない

 

接客して色々な男の人に会って

稀に、本当に稀にだけど優しい良い人もいた

 

店長に拾われなければ、あのまま廃人になってたのだから

向こうは店の利益の為だっただけでも、決断して良かったと思う

 

 

逃げ

 

ああ、誰かにこんな事言われたの初めてだ

 

この店長が私をどう使うかは薄々気づいてた

私が当時22歳を迎えたばかりで親と絶縁し一人暮らしの女だ

その業界なんて女であれば穴があればウエルカム

親族バレを気にしない私は丁度良い人材だ

 

その店長に会いアドバイスを受けながら逃げる準備を進めた

 

男がまた私を欲の捌け口にしに来た

私は体調悪い心臓が痛いと入れるのを断る

男はせっかく持ってきたネタを前に我慢出来ず、自分だけ打つ

 

私はこんな奴の為に

 

いつも入れるときは自分で打てない私に打ってから男が自分に打っていた

自分がシラフで男が入れてるのを見て、気持ち悪いと思った

 

ヘロヘロしている男が何か言ってるけど無視し続ける

早く出て行けとひたすら待つ

せっかくネタを入れたのに構ってくれない私を詰り出すがひたすら無視する

痺れを切らし男は出て行く

 

男が家を出て1時間待ち、もう辺りにはいないのを確認した

店長に連絡する

部屋のものを運べるだけ運んだ

といっても大きいものはこっそり整理していたので軽自動車1台に詰め込む事が出来た

 

幸い男に鍵を渡していなかったので来たとしても入れない

入ったところで私はいない

 

このお部屋バイバイ

 

 

 

 

タスケテ

殴られた後も男は何事もなかったかのように連絡して来て、丸二日家で過ごして帰り、数日後に「欲しいだろ」と現れて、を繰り返していた

 

私はソレを欲したことがあったのだろうか

もう覚えてない

入れられても確実に効き目が弱くなっている

耐性がつきやすい体質のようだ

最初の頃のような全身の毛が逆立つ感じも浮遊感も多幸感も、あまり感じなかったし自分の意思が残ってる

でも効いている演技はし続けた

男が私をまだコントロール出来ていると思わせる為に

 

男は偶にネタの質のせいで効きが悪い時に殴ってきた

私は大袈裟に怯えたフリをした

殺されない事、

私が外へ出て助けを求めたら男が困る事は気付いてた

今にも逃げ出さんばかりの壊れた怯え方をすれば男は大人しくなった

仕事に行きながらそんな生活を繰り返し、どうやって逃げるか、縁を切るか考えた

相談出来る人間なんていない

 

ある時の仕事の通話で自称経営者という男と繋がった

よくよく話を聞けば、ただデリヘルの店長だった

私は自分の状況を半分ほど嘘を混ぜて伝えた

 

「今すぐ逃げろ」

 

 

 

解離

ボグォッ

 

私の後頭部が壁にぶつかる

殴られたようだ

男の手が首を締めてくる

体内にはまだ成分が残っているから感覚は普通より鋭いし精神も興奮状態で

怒りやすい人は更に怒りやすく

怯えやすい人は更に怯えやすくなる

 

声のようなものを叫んだ

恐怖でガタガタ震えながら蹲る

 

この頃は

自分なのに自分じゃないような感覚によくなった

子供の頃から偶にあったけれど

公園で知らない男に触られ写真を撮られたときも

車で後をつけられ自慰行為を見せられたときもあったかもしれない

もう一人の自分が少し上から自分を見てる

上から見てる自分が本体っぽくて、他人事のように冷酷になれる

男は私が叫んだ後に首から手を離して

いなくなっていた

 

これで解放された?

そんな訳無い

あいつにとって私は都合の良い人間だから

 

本体の方が冷静に分析していた

グーで殴られるのは初めてだった

殴られないように、演じたり合わせたりして生きてきたのだから

 

耐性

男がいつも持ってきたネタは3万で買ってると言っていた

相場なんか知らない

3回目位から「アレやりたいけど金ない」と言われた

私が費用を出すようになった

男はもうずっと打っているのかガラス製の太い注射器で、打つ量も多い

私はテルモの使い捨て注射器で、男の半分も打たない

ほとんど男が使ってしまう物を言われるがまま3万出して消費していく

 

体内に入れた瞬間に口の中が乾き脳が痺れ女性器からは体液が滴る

 

男と行為するより体内に物を入れる瞬間に一番快感を得ていた

男が腰を振る間に冷めている時もあった

それを悟られないように演技をしていた

 

男性が自信を無くさないように

女性がその理想に近い虚像を演じる

誰かに教えられた訳でもなく、自分の身を守る為に恐らく女に生まれたら本能的に持っているものだ

 

 

私は徐々に耐性が付き、あまり快感を得られなくなっていった

男は毎回私に費用出させる上にお互いの使用料に差がある

何より男のやりたいプレイに付き合わされる事、それを強引に私がやりたいというように持っていく事も嫌だった

 

不満が溜まっていった

何より金銭的にも厳しかった

 

私はもう会いたくないしやらないと言った

 

 

 

感覚

その日は一睡も出来ず夜になり、眠れてないのでは仕事をする自信がなく、ずっと浮遊感と倦怠感があったので休んだ

まる二日以上起きていた、食欲はない

糸が切れたように眠れて目が覚めたら男から連絡が来ていた

「会いたいから家に行って良いか?」

家まで送ってきたのは心配とかじゃない

断ると何をされるか分からない

その夜はなんとか仕事に行き、翌朝男が家に来た

 

男の指示通りにカーテンの上から更に集めの布や毛布をレールに括り、外からの光が入らないようにする

眩しいからだ

感覚が全て敏感になる

光も音も味も匂いも

 

朝なのに真っ暗な部屋で私はまた言われた通りに腕を差し出し

体を弄られ、腰を動かされ、頭が色々な感覚でいっぱいになり

時間を消費していった

 

切れて来たら追い打ちし、また数時間消費する

男が来て二日消費する、その後寝る、仕事行く、男が来る、を繰り返していた

 

時々夜中に外出をする事もあった

必要なミネラルウォーターを買ったり、車の中でする事もあった

怖い気持ちとどうにでもなれば良いという気持ち両方だった

されるがまま言われるがままだった

 

 

 

 

失敗

勤務を終え、まだ夜が明けぬ暗い時間に迎えに来た男と女のいるアパートへ行った

男は42歳と言っていた

部屋には30代位の女がいてお茶を出してくれた

 

男は半裸になり女も下着姿で、私は寝室に入るよう言われた

女が楽な格好してと私の服を脱がせようとした

腕を捲くられ男が私の左腕に何やら当ててきた

 

チクリとする

 

ああ

騙されたのか

 

左腕からの鳥肌が立ち舌が痺れて頭がゾワゾワする

体がフワフワして浮いてるような沈んでるような感覚で動けない

 

服を脱がされ男と女に体を弄られる

目の前で男と女は交わる

逝きまくる女の上で腰を動かし続ける男

やがて私の上でも腰を動かし続ける

女は満足そうに見つめてシャワーを浴び着替える

「仕事行ってくる」

もうそんなに時間が過ぎていたのか

男と二人きりになり、また私の左腕にチクリと痛みが刺さる

 

男にまた乗られて、私の内部を性器で殴ってくる

 

暫くしてシャワーを浴び着替え、送ってってやると私と最寄り駅まで歩いた

もう外は明るくて昼前だった

心配だからと男は同じ電車に乗り自宅まで付いてきた

あんたのこと気に入ったからと連絡先を交換し男は帰った

判断力も無くなった自分は、言われるがままで自宅に入った

寝ようにも寝れず、ひたすら布団に包まり目を閉じた